鎌倉で始まったリユーズ容器“Megloo”は、プラゴミの削減に貢献できるか

鎌倉で始まったリユーズ容器“Megloo”は、プラゴミの削減に貢献できるか

■リユーズで環境負荷を減らすMegloo

先日、鎌倉市が採用しているテイクアウト容器のMeglooを試す機会があり、私自身が経験したことを交えて伝えていこうと思います。日々の生活ゴミで一番多いのがプラスチックごみであり、減らしたくてもどう減らせばよいのかがわからないものです。

とはいえ、習慣づけできない面倒なことはやる気がおきないので、このリユース容器を使おうという身近な試みから始めてみることにしました。

▲Megloo

Megloo対応店は鎌倉駅周辺に十一店舗(2022年6月現在)あります。容器はこの店舗内で共有されているので、洗って殺菌すれば加盟店舗内を循環して使用されることになります。まさに「めぐる(Megloo)」という命名の由来通りなのですね。

加盟店のひとつである鎌倉駅前にある蕎麦屋の竹扇(ちくせん)で、私は丼ものをテイクアウトすることにしました。

<使い方>

1 Megloo加盟店サイトにアクセスしてQRコードを読み取り、LINEで友だち登録。

2加盟店がスマホの画面に出てくるので、店を選んで借りる(借りる店名が提示され、個数を入力する)

3 店の側では貸し出した容器がどこにあるかが追跡できるので、ユーザーは指定の場所に返却をした後にLINE画面からも返却手続き。

なお、容器を1週間以上返却していない場合はLINE上からリマインドが表示されるそうです。現在のLINEユーザーは9400万人前後だそうで、かなりの割合でこのシステムは便利だと言えるのではないでしょうか。

■Meglooを使ってみた感想

実際にMeglooを手にしてみると持ちやすい大きさであり、耐熱、耐久性が高い容器だと大概の料理には対応できると思います。味も美味しく、各加盟店が提供するメニューについてのレビューも上々のようです。

お店のスタッフに、Meglooをどのような人たちが使用しているかをたずねたところ、市内在住の人たち、特に市役所勤務の人は利用率が高いということでした。返却場所は加盟店、もしくは鎌倉市役所内で指定された場所で、回収され洗浄、殺菌された容器は加盟店内で再び使用されることになります。

鎌倉市内に在住または勤務している人なら、使用後写真のような返却ポストに返すだけでよいのですが、私の場合はスケジュールの都合上、家にテイクアウトを持ち帰って洗浄後に容器を返却しました。

▲Meglooの返却ボックス

実際に使ってみた感想としては、もっとMegloo対応エリアを広くするか、イベント会場など多くの人たちが集まる場所で使用してその場で返却するという形だと成功するのではと思います。

▲加盟店のテーブルに置かれたMeglooの返却ボックス

神奈川県内では現在のところ、サービスが鎌倉市内だけなので、逗子、横浜南部、藤沢、茅ヶ崎、平塚あたりまで使用が広がるとかなり需要が高くなるでしょう。

▲家庭に持って帰っても洗いやすいMegloo

Megloo容器は大変洗いやすくて扱いやすいです。だが何度も使いまわしている限り、容器は少しばかり小さな傷がついていくのは避けられません。使いまわされていずれは廃棄される際、現在使われているMeglooは環境にやさしい素材なのかどうかが気になりました。

■Meglooのはじまり

Meglooが始まったのは2021年10月、コロナ禍の最中でした。このサービスを始めたのは株式会社カマンで、鎌倉在住の善積真吾氏が創業しました。善積氏は当時会社員でしたが、独立して起業を考えていたそうです。2020年春に緊急事態宣言が出されてからというもの飲食店は大きな打撃を受けましたが、お客さんの間で需要が増えたのはテイクアウトでした。同時に「おうち時間」がもたらしたのは多くの容器ゴミでした。

善積氏は幼い息子さんが散歩中に道端のごみを拾っているのを見ているうちに、大人がごみを多く出している現状について考えるようになりました。さらに自宅近辺の飲食店でテイクアウトが可能な店のマップを作成してWEB公開したところ、容器を持参できる店を知りたいという問い合わせが十件ほど寄せられたそうです。

▲Megloo HPより

自前の容器を持ち込む場合、各自で大きさの違う容器を持ち込まれた場合に店側のオペレーションが難しくなるので、リユーズ容器の貸借を地域でシステム化しています。

私自身も海沿いに住んでいるのですが、夏の花火大会、ライブではゴミの持ち帰りが事実上ルール化されているのを目撃してきました。地元のゴミ回収場所についても、居住地域外の人が勝手に捨てに来る、コンビニや駅のゴミ箱にも生活ゴミを出す人がいるので、近頃はごみを捨てる場所を見つけるのにも一苦労です。そしてゴミの中でも大半を占めるのが、飲食物関連のプラスチックであり、もっとも表面積が大きいのは容器類なのです。

飲食店にとってリユーズ容器を導入するのに、保管スペースとスタッキング(積み重ねること)、そして扱いやすい素材とデザインであることは欠かせない条件です。善積氏は株式会社カマンを立ち上げるにあたって新たに容器を欧州から取り寄せました。それはデンマークとオランダのメーカーが統合したブランド「ロスティ・メパル(Rosti Mepal)」が生産しているもので、色は赤、黒、青、グレーの四色です。

素材はリサイクルしやすいポリプロピレンで丸形のワンサイズで考えていたそうですが、スープやたれ用の小さな容器と、サンドイッチも詰められる少し深めの角型も取り寄せて、結局は丸形三種類と角型一種類にしました。

▲Meglooの容器

現在のところ鎌倉では、Meglooを使用する場合に消費者側での新たな負担額はないのですが、もし破損した場合、または未返却の場合は1800円を払わなくてはなりません。容器がどれだけ長持ちするか、使いやすいかということも消費者としては気になる点です。

私たちが日常家庭で使用しているさまざまな大きさのタッパーウェアも、蓋がゆがんだり溝の部分が緩んできたりすると液体漏れが気になりますし、そもそも洗浄しにくい形のものもあります。

飲食店にとって問題なのは、リユーズ容器と使い捨て容器の両方を置かなければならないことです。重ねやすく蓋の溝が浅くて衛生管理がしやすい形、すなわち洗いやすい形であることも求められます。善積氏も自社での容器を開発中ですが、素材は扱いやすいポリプロピレンを予定しているそうです。

耐熱性、耐久性などあらゆる面を考慮すると植物性プラスチックよりポリプロピレンの方が良いと判断したとのことです。とはいえ、これらの容器が永久に使えるものではない限り、最終処分時のことを考えれば環境にやさしい素材で作られたものであることが望ましいのではないでしょうか。

なぜ湘南地区の中でも先頭を切って鎌倉市でリユース容器が受け入れられたのでしょう。実は同市では焼却炉の老朽化が進んでいるのですが、焼却炉を新設せずに廃棄物の削減に取り組むことになりました。

鎌倉市では2021年10月20日から2022年3月末までの約5か月間で、16店舗の協力により285名の利用で1000個の容器を削減、137kgのCO2削減に貢献したそうです。一部の飲食店での協力により、身近なことからCO2削減に取り組めることが立証されたと言えるでしょう。

コロナ禍だった2020年から3年を経て、日本の国内外で観光もイベントもコロナ前の状況に戻りつつあります。地域で、または企業がリユーズ容器を積極的に使用することで、プラスチックごみの削減に大きな効果を上げることでしょう。

■使い捨て容器はどこまで削減できるか

昨年善積氏がMegloo容器を取り寄せた、ヨーロッパ各国における使い捨て容器事情にも目を向けてみました。

脱酸素社会に向けて、パリ協定以降EU加盟国において飲食店にはさらなる義務が課されることになりました。フランスでは2023年1月1日からファストフード店で使い捨て容器の使用を禁じる法律が施行されていて、マクドナルドでは独自のリユーズ容器が使用されるようになっています。

ドイツではすでに、テイクアウトをする際には店の方で再利用が可能な容器を使用することを法律で義務付けていますが、今年より列車内で販売する飲食物もリユーズ容器が可能になりました。スウェーデンでは2024年よりMeglooのようにQRコードを読み取って登録してリユーズ容器を使用するシステムを準備中ということです。

ヨーロッパ各国よりも人口の多い日本で、パリ協定での数値目標を達成するにあたって、単にエネルギー問題に結び付けての議論だけで思考停止してはなりません。ゴミの削減は日常生活で実現可能であり、その中でも使い捨て容器の利用を制限することでかなりのプラスチックゴミを減らすことができるでしょう。

しかし、日本がすでに高齢化社会であることを考えれば、Meglooなどのリユーズ容器のシステム導入にあたっては、インターネットでの手続きだけでなくアナログな方法で使用しやすいシステムを浸透させることが必要とされています。面倒だ、場所をとるといった抵抗感がないやり方で慣れ親しんでいくには、誰にでもわかりやすい、ルールを守りやすいシステムが肝心なのではないでしょうか。

<Megloo>

https://megloo.jp/

(文責:加藤麻衣子)

(参照サイト)

https://drive.media/posts/33639

 

https://project.nikkeibp.co.jp/mirakoto/atcl/food/h_vol77/

 

https://megloo.jp/

 

https://www.sgs.com/en/news/2022/10/safeguards-11422-eu-issues-new-legislation-on-food-contact-recycled-plastics

 

https://www.packaginglaw.com/news/eu-publishes-new-regulation-recycled-plastic-food-contact-materials

 

https://www.lemonde.fr/en/environment/article/2023/01/02/disposable-cartons-for-french-fast-food-restaurants-are-almost-gone_6010063_114.html

 

https://www.theguardian.com/world/2022/dec/28/france-ban-on-single-use-restaurant-tableware-hailed-as-fast-food-revolution

 

https://www.themayor.eu/en/a/view/new-law-in-germany-gives-people-the-right-to-get-takeaway-in-reusable-containers-11362