太陽光発電で未来へエネルギーをつなぐ、横須賀市の「株式会社サンエー」の取り組み

太陽光発電で未来へエネルギーをつなぐ、横須賀市の「株式会社サンエー」の取り組み

■株式会社サンエーの会社概要

横須賀市に本社のあるサンエーは、1994年創業。1990年代後半から、すでに太陽光発電に取り組み、導入・設計・施工からアフターケアまでノンストップのサービスを展開してきました。そこには、同社の庵﨑社長が幼少期に太陽光発電の本を読み、「太陽光はみんなが平等に得られるエネルギーである」と感銘を受けたことが影響していたそうです。

結果、2010年頃に世間で再生可能エネルギーが話題となりましたが、それよりも先んじて家庭や企業、病院や銀行などへ導入してきました。もちろん同社の屋上にも、100枚近くの太陽光パネルが設置されています。

■横須賀市への太陽光発電システムの導入と提案


▲横須賀市からの感謝状など

横須賀市への太陽光発電システムの導入の発端は、実は2022年夏よりもさらに5年ほど前。当時はカーボンニュートラルなどが話題となり、民間企業にも自家発電が浸透しつつありました。しかし一方で、CO2削減に向けて自治体でどう進めていいか、誰もわからない状態だったそうです。

そこで、サンエー側から横須賀市へ脱炭素社会に向けての太陽光発電システムを提案。目指すべき方針から現場での作業内容に至るまで、縦割りの各部署関係者に丁寧に説明していきました。

施工前の段階においては、綿密な調査と予算への手厚いフォローが重要です。調査は実際に横須賀市の約70カ所の小中学校の屋上を周り、耐震強度などを厳しくチェック。一般的に1枚で20kgあるといわれる太陽光パネルを最大どれくらい配置し、蓄電池をどこに置けるかなど調査を重ねました。

特に生徒の安全が最優先のため、パネルは絶対飛ばないようにしなければなりません。アンカーを打って固定させたいところですが、屋上に穴を空けることで雨漏りが発生しては問題です。長年の経験の元で専用接着剤などを活用し、風速30m以上の強風でも飛ばない強固な設置となりました。

また蓄電池についても、生徒の目に触れないエリアに置きたい、他の配線の邪魔にならないようにといった安全面への配慮に加え、先生らが駐車で使うスペースは避けて欲しいといった細かいニーズも反映させた上での提案が行われました。

予算についても、同社は各自治体や省庁による再生可能エネルギーへの補助金を熟知しています。一般的に太陽光発電システムの導入では高額な初期費用がネックとなりますが、補助金の有無で費用は3割以上軽減できます。

サンエーでは住宅向けに初期費用0円で設置できる「0円ソーラー・スカエネ」も展開。電気代が高騰している昨今、導入すればすぐに電気代削減効果が得られるそうです。

取材時に印象的だったエピソードが、二世帯住宅への提案についてです。近いうちに家族構成の変動が見込まれるなかで、過剰な設備にならないかとまで考慮しているとのこと。短期的な話でなく、10年20年先の長期的な視野でも提案をしています

■実績と導入後のアフターケア

 今回の設備の導入の結果、市内9施設に太陽光発電設備が設置され、年間250tのCO2削減と約56万KWhの発電がなされる見込みです。太陽光パネルは多いところでは263枚設置され、1日で使う電気量の約3分の1をカバーするとのことです。


▲屋上に設置の太陽光パネル

太陽光発電システムは設置して終わりではありません。期待通りの発電効果が得られているか、不調時のメンテナンスをどうするかなども重要です。まず太陽光パネルは防水加工もされ頑丈で、寿命も30年以上あります。加えて同社では、半年に一度の点検などのアフターケアも行われます。

▲電力の見える化

また発電データなどはさまざまな形で「見える化」され、保守・管理されています。何かトラブルがあればすぐに駆け付け、ブレーカーなど電気的な問題であれば即日解決できるケースがほとんどとのことです。

見える化により、地域に即した対応も行いやすくなります。海沿いの横須賀市は、都心部よりも気候は穏やかで、特に1月は晴天率が高め。そのため、長い日照時間により発電量が高くなるというメリットがあります。また太陽光パネルは高すぎる熱に弱いのですが、横須賀市では潮風による空気の循環で欠点がカバーされるそうです。

一方で潮風による塩害や爆弾低気圧の発生のリスクなどは、太陽光パネルの頑丈さによって十分カバーされるとのこと。

同社は様々なエリアでの実績があり、他県の海沿いの町や山間部など、横須賀以外の地での太陽光発電における特性も熟知しているそうです。

■地元・横須賀市への貢献と、防災拠点の脱炭素化


▲横須賀の海と太陽光パネル

さらに太陽光パネルと蓄電池の導入は、環境へ配慮した防災拠点の脱炭素化のメリットがあります。学校などの施設は、災害時には避難所となっており、停電時にスマホなどへの充電供給が望まれます。

そのため、日中だけでなく夜間であってもある程度の電力利用に対応できることが必須となります。蓄電池のシステムは、太陽光パネルで日中発電した電気を貯めることができます。

昼夜を問わず非常時の電力使用ニーズに対応、停電から復旧するまでの間の使用に十分耐えうることができ、余計なCO2排出を抑える効果も期待できます。ちなみにサンエーの本社自体、横須賀市の「停電時スマホ充電スポット」となっているそうです。

また特にコロナが猛威をふるっていた数年前からは、人が避難所へ集まること自体のリスクを考慮した防災が求められていました。そこで、自宅を防災拠点とするため、家庭用や中規模型の蓄電池の需要も高まっています。特に最近は国際紛争の問題などから、個人が自身でエネルギー確保をしなければならない時代になってきたという意識を持つ利用者が増えてきているそうです。

■寄せられる感謝の声と、未来に向けての展望


▲株式会社城ヶ島水産様 パネル写真

今回の横須賀市への導入に際して、地元からは好意的な反応がありました。たとえば学校への導入で現地へ向かった際に、周辺住民のかたへ経緯を説明したところ、歓迎されたとのこと。通常、工事のための路上駐車は煙たがられることも多いのですが、「地元のためであれば喜んで!」と暖かく迎えてもらえたそう。

また、昨今は電気代の急騰で、同社への電気代の問い合わせが急増するなか、数年前に導入した企業からは「早い時期から太陽光発電を入れたことで値上げの影響を抑えられました。ありがとうございました」という感謝の連絡も寄せられていたとのことです。

最後に今後の同社の目標をお伺いしました。まずは太陽光発電システムという再生可能エネルギー設備の普及を地元・横須賀を含む三浦半島地域から発信していくこと。やがては、全国へ普及させ、次世代が住みやすくなる地球環境を作り続けていきたいとのことでした。

実際に、エネルギーの確保や環境への配慮について、各自治体からの問い合わせも増えてきているそうです。太陽光発電への動きが今後どれくらいのスピード感で浸透していくのか、目が離せません。

 

(高柳優)

 

<株式会社サンエー>
https://sanei-e.com/