Win-Win-Winの関係でフードロス問題に取り組む「NPO法人神奈川フードバンク・プラス」

Win-Win-Winの関係でフードロス問題に取り組む「NPO法人神奈川フードバンク・プラス」

■日本の食品ロスは年間 600万トン!?

アメリカで1967年に開始されたフードバンク活動は、その後フランス、カナダ、イギリス、オーストラリアなど世界中のさまざまな国に広がり、日本では2000年以降フードバンク団体が設立されるようになりました。

しかし、フードバンク活動の背景となる「食品ロスの問題」「貧困問題」への認識が十分に浸透していないこともあり、いまだ活動が十分に認知されているとは言い難い状況にあります。そんな問題に真っ向から取り組む「NPO法人神奈川フードバンク・プラス」とはどんな団体なのでしょうか。

―「NPO法人神奈川フードバンク・プラス」では具体的にどんな活動をされているのでしょうか?

(山田さん:以下同じ)日本の食品ロスは年間 600万 トンにも及ぶと言われています。そんな食料が溢れている日本ですが、少ない額の年金で暮らさざるを得ない高齢者、子育てに苦慮して収入が上がらないひとり親家庭が増えています。またコロナ禍で家計が苦しく食べることに窮する方も少なくありません。

私たちは、そうした方々への食の支援を入り口に、「おたがいさま」が当たり前になる「ささえあい」のネットワークづくりを目指しています。また、無駄に捨てられている食品を再び生かすことで、食品ロス問題にも取り組んでいます。

▲日本の食品ロスは年間約621万トン(※1)。これは日本のコメ生産量(※2)に匹敵します。
(※1 2014年農水省「食品ロスの削減とリサイクルの推進」、※2 2016年度 農林水産省)

2017年7月、NPO法人として認可され、横須賀市・横浜市金沢区を中心に、フードバンクかながわ・横須賀市等と連携して活動してきました。現在は三浦市、逗子市へも活動を広げております。


▲2018年6月20,21日  フードバンク二本松(福島被災高齢者支援)と共に川内村訪問

―団体名の「プラス」はどんな意味があるのですか?

食品の受け渡しを単に行うだけではなく、「『人と心を通わせる』そんな繋がりを生み出せるように」という思いを込めてプラスを団体名につけました。

食支援を必要とされる方へのヒアリングを通して、行政の支援が必要そうな場合は生活保護の申請を提案したり、配布場所で「何でも相談室」を開催したり、地域の「こども食堂」や「おとな食堂」、行政との架け橋になったりと、地域コミュニティとしての役割も担っています。

―どんな食品を取り扱っているのでしょうか?

基本的には、開封前で賞味期限が1ケ月程度あり、保存がきく食品を扱います。大手調味料メーカーやスーパーマーケット、飲料メーカーなどをはじめ、行政からの備蓄品の提供など、年間約30トンもの食品を集め、必要とされている個人や団体へと提供しています。


▲保管室にはメーカーなどから提供された大量の食品が保管されている

―実際に利用されているのはどんな方が多いのですか?

生活困窮者を中心とした、①公営住宅の一人暮らし高齢者 ②ひとり親家庭 ③子ども食堂、老人クラブ等の団体 ④コロナ禍による生活困窮世帯の方がいらっしゃいます。各世帯へ毎月1回、5Kg程度の食品を配布しています。配布日によっては冷凍食品の配布などもあります。


▲冷凍食品が配布されることも

■「もったいない」を「ありがとう」へ

―活動のきっかけを教えてください。

もともと地域の青少年指導員や保護司として活動していたこともあり、地域社会に直接関わり役に立つ活動ができないかと考えていました。

最近では売れ残った「恵方巻き」を捨てているコンビニ等が話題になったこともあり、食品ロスの有効活用、必要とする方々へのパイプ役の必要性を感じ、フードバンク活動を始めようと思い至りました。大量に破棄される食品(食品ロス)を預かり、必要としている方々に食品を届ける=「もったいない」を「ありがとう」へと変える活動は、とてもやりがいのある活動だと感じています。

―支援を受けた方の反応は?

何よりよくいただくのは「助かった」というお声です。「自分一人ではどうしていいのかわからない」そんな時は一人で抱え込まずに、まずはご連絡いただければと思います。一緒に考えていきましょう。

■活動を支えるのはボランティアの方々

食品とともに活動に欠かせないボランティアさんは20名程。生き生きとしたその姿が魅力的なシニアの方々を中心に、日によっては中学生や大学生なども参加し賑わいをみせます。

―ボランティアにはどうやって参加するのでしょうか?

毎週水曜日・金曜日(10時~15時)に横須賀市三春町5-21の事務所が開いていますので、ご希望の方はご連絡いただければと思います。提供された食品の仕分け(在庫管理)や、支援先毎の配布作業があり、年代を超えた多くの方が参加され、楽しく活動しております。


▲活動日はボランティアさんみんなでランチを楽しむ

ボランティアさんに活動の感想をお聞きしたところ、「地域と直接関われる場所であり、自分にとっての居場所にもなっています」「家にいるよりも楽しいので毎日のように参加しています」「自分の個性を活かしながら活動できるのが嬉しい」など、みなさん楽しそうに話してくれました。

■今後の展望

― 今後の展望を教えてください。

活動地域の拡大と、一人暮らし高齢者、ひとり親家庭等、食品支援先の拡充を図りたいです。また行政とのパイプも太くしたいですね。


▲代表の山田さん(前列左端)と活動を支えるみなさん

ボランティアの方々の仕分け作業は、終始賑やかな雰囲気でおこなわれ、取材中には子ども食堂の担当者が顔を見せるなど、「神奈川フードバンク・プラス」はまさに地域コミュニティとして欠かせない存在です。

 

支援が必要な方、フードロスを抱える企業、そして社会貢献をしたいボランティアの方々、まさに三方よしの関係だからこそ、貧困という難しい問題の解決に向けた大きな力となっているように感じました。

 

特定非営利活動法人 神奈川フードバンク・プラス

住   所    〒238-0014 神奈川県横須賀市三春町5-21

連 絡 先    電話番号 FAX:046-827-7050

Email kfoodbankp@gmail.com
詳細       http://foodbankplus-kanagawa.org/

 

(取材・文/おぜきめぐみ)